ああ、郊外 Suburbs, my hometown
郊外ベッドタウンに生まれ育った僕は、なんとなく郊外エリアの風景に嫌悪感を持っていました。量産される建売住宅、切り揃えられた街路樹、駅前商店街は少し寂れ、田舎とも都会とも言えない中途半端さ。裏山に分け入れば、自然を感じますが、それも全て植樹された人工林だと思うとどこにも逃げ場のない閉塞感を感じていました。
30代になり改めて見返す街の姿はもう少し愛着のあるものになっていました。まだ小川は流れ、裏の人工林に鳥がさえずっていて、深呼吸をしました。僕の感じていた田舎と都会の中途半端さこそ郊外らしさ、そして、それは僕にとって哀愁漂う原風景なのだと感じています。
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「郊外、その先へ」
東京のアトリエからいくつもの川を越えて常陸国出雲大社に向かうと徐々に住宅地が減っていき、里山の緑に囲まれたのどかな風景が広がってきます。青くて甘い空気をたっぷり吸い込んで眺める山の向こうには高圧電線が走っています。今通ってきた国道50号を車が行き交い、里山の風景に点在する住宅も当たり前ですが工場生産の新建材による住宅ばかりです。
電線、線路、道路と線が続く限り、経済圏はどこまでも続くことを感じます。それと同時においしい空気と野山に癒される、そんな風景を構造用合板に重ねています。規格製品による大量生産型の街と自然の関係を、制御・加工された自然物である合板に重ねてきた「合板都市シリーズ」、その延長に「郊外、その先へ」と続く遠郊外や里山の風景を表現します。
合わせて、人工林をテーマにした「Nowhere woods」シリーズの新旧作が出揃います。
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